大阪でCGの勉強をしている長男が、先日24歳の誕生日を迎えました。
家族と離れて初めて迎える誕生日です。
「一人でも大丈夫だから、来なくていいよ」と言っていたものの、
本当は少し寂しかったのだと思います。
電話の向こうの声に、そんな気配がありました。
私は、前から決めていました。
誕生日だけは、一人にしてはいけない。
「特別な日」は、何事もなく、心穏やかに過ごしてほしい日だから。
実際、数日前には少し心配なこともありました。
デパ地下で試食をしようとしたら、お店の人に「2回目ですか?」と誤解され、
そのことで長男が激しく怒ってしまい、電話をかけてきたのです。
小さな行き違いが大きなストレスになる──そんなことは、これまで何度もありました。
だから私は、迷わず大阪へ向かいました。
「何も起こらない、穏やかな誕生日になりますように」と願いながら。
待ち合わせは大阪駅。
先に着いた私を見つけた長男は、少し残念そうに眉を下げました。
「僕の方が先に見つけたかったのに」と。
あ、しまった。
想定外のことに弱い長男。けれど、すぐに「気持ち、切り替える」と言って、
ほんの数秒後にはいつもの表情に戻っていました。
その成長ぶりに、胸の奥で小さくホッと息をつきました。
この日は、長男が好きなアニメの展覧会へ。
障害者手帳を提示すると、私の分は無料になり、
「一人分の料金で二人で観られるなんて、なんかいいね」と笑い合いました。
でも展示の前で他の来場者さんとの距離が近すぎたり、
静かな空間で声が少し大きかったり。
一緒にいても、私はどこか気が張っていました。
「ちゃんとやっていけてるかな」と、胸の奥で心配の種が芽を出します。
けれど本人は終始楽しそうで、
「一人じゃ絶対無理だった。ありがとう」と言ってくれました。
その言葉に、来てよかった、と心から思いました。
ランチは、長男が見つけたお気に入りのイタリアンへ。
生ハムときのこのクリームパスタと、じゃがいもとソーセージのトマトソースパスタを頼んで、
二人でシェア。
お腹が満たされると、少しずつ会話も柔らかくなっていきます。
食後、「誕生日ケーキはいいや」と言うので、
本屋さんに立ち寄ってから長男の部屋へ。
相変わらず、部屋は“若者らしい”散らかりよう。
私はいつものように、黙って洗い物と掃除。
ワンルームの小さな部屋が、少しずつ整っていく。
その過程が、なんだか母親としての“儀式”のようにも思えました。
帰り際、玄関で「ちょっと待って」と呼び止められました。
振り向くと、長男がぎゅっと抱きしめてくれました。
24歳の青年の腕の中に、あの頃の小さなぬくもりがふと重なります。
「ありがとう」
その一言に、胸があたたかく満たされました。
24歳の誕生日。
これからもどうか、無事でありますように。
そしてこの一年が、少しでも楽しく、穏やかでありますように。
親として願うことは、ただそれだけです。


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