夫は何年かごとに、仕事のことで少し落ち込む時期があります。
「もう転職したい」と口にするのも、そのたびに同じ。
頑張っても評価されない、周囲との空気がうまく嚙み合わない。
そんな時、夫の表情はどこか曇ります。
夫は仕事にとても真面目です。
朝は誰より早く出勤し、帰宅は一番遅い。
飲み会で席が足りなければ、自分の分を譲り、食べず飲まず。
上司が感染症で休んだときは、その分の仕事を引き受けて、
ようやく戻ってきた上司から「やり方が違う」と叱られたこともありました。
動員が必要な行事では、誰も行きたがらないのを見て自ら手を挙げる。
休日出勤も、残業手当のつかない仕事も、結局引き受けてしまう。
みんなが気づかないような場所の掃除や、駐車場の草刈りまで。
頼まれていないのに、つい動いてしまう。
「いい人」なんだと思います。
でも、あまりにも報われない。
家では、「今日も大変だった」とアピールするので、
それを聞く私は、思わず「また始まった」と苦笑いしてしまいます。
けれどその奥には、きっと“頑張っても伝わらない悲しさ”があるのだと思うのです。
見返りを求めているわけではない。
でも、あまりにも見返りがなさすぎるのは、やっぱり切ない。
「便利な人」として扱われていないかな、
「いい人」で終わってしまわないかな、
ときどき、そんな風に感じます。
人って、本当は“持ちつ持たれつ”のはず。
どちらか一方だけが差し出し続けていたら、
心がすり減ってしまう。
それでも夫は、誰かのために動いてしまう人です。
だからこそ、どうか――
その誠実さが、いつかちゃんと報われますように。
小さくてもいい、
「ありがとう」が届く日が、ちゃんとありますように。

コメント