思春期の頃、長男が心の病を抱えていた時期がありました。
朝は布団から起き上がれず、食欲もなく、好きだったことにも手が伸びない…。ただ一日をやり過ごすことが精一杯。
母親の私にできたのは、そばで静かに見守りながら「少しでも気持ちが和らぐように」と暮らしを整えることでした。
私は医者でもカウンセラーでもない。
でも“母親だからできること”はあるはずだと信じて、手探りで生活の工夫を重ねていきました。
朝の光を一緒に浴びる
カーテンを開けるとき、ただ「朝だよ」と声をかけるのではなく、「一緒に光を浴びよう」と寄り添う気持ちで。
息子が布団から出られない日も、私がそっと部屋に入り、光を届けることで「今日も生きている」というリズムを一緒に感じるようにしました。
息子はできる日はたとえ5分だけでも庭に出て朝の光をあびるように心がけていました。
ちょっとだけ体を動かす
ストレッチや散歩、庭の花に水をあげる…そんな小さな動きでも血の巡りがよくなり、気持ちも変わります。
息子が気が向くと一緒に家の周りをゆっくりと散歩するようにしていました。
食べられない日には、ひと口だけ
何も食べられない息子を前にすると、本当に胸が苦しくなります。
それでも、あきらめずに小さな工夫をしました。
温かいスープをほんの少し。バナナを半分。ゼリーをひとさじ。
食べたいもの、食べやすいものを用意すると、息子も口にしてくれました。
栄養はもちろん大事ですが、まずは食べられるものを食べられるだけ、という気持ちで向き合いました。
眠れない夜には、安心を届ける
夜はとくに不安が強くなる時間でした。
私は決して「早く寝なさい」とは言わず、ただ隣に座って静かな音楽を流したり、温かいハーブティを用意して一緒に飲んだりしました。
眠れなくても、安心できる夜を過ごすことが大事なのだと、その時学びました。
言葉を待つ時間も大切に
息子は気持ちをなかなか言葉にできませんでした。
「しんどい」「苦しい」とだけ言うことがありました。
私は大げさに反応せず、「そうだね、しんどいね、苦しいのね」と受け止める。
その小さなやり取りの積み重ねが、彼の心の支えになっていたのではないかと思います。
あの頃は毎日が不安で、心配で、押しつぶされそうでした。
けれど今振り返ると、あの小さな習慣こそが、息子を少しずつ立ち上がらせてくれたのだと感じています。
母としてできることは決して大きくはないけれど、
「寄り添う生活習慣」こそ、心を支える大きな力になるのだと思うのです。


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